研究概要 |
細胞周期におけるサイクリン依存性キナーゼの活性はその調節サブユニトであるサイクリンの結合と分解により制御を受けている。M期サイクリンはユビキチンープロテアソーム経路により分解されるが、その分解制御については細胞周期チェッックポイントの観点から重要な研究課題となっている。本研究では、サイクリンと相互作用する新規の分解制御因子を分離同定し、その機能解析を行なった。我々はまず、サイクリンAのN末端ドメインを用いた2-ハイブリッド法にを用いて、アフリカツメガエルのXDRP1遺伝子をクローニングした。XDRP1は585アミノ酸からなる蛋白質であり、N末端領域にユビキチンと高い相同性を示し、出芽酵母のDsk2蛋白質とよく似ていた。XDRP1はサイクリンAのリン酸化部位を含むN末端ドメインと結合する。XDRP1はA型サイクリンさらに異種のサイクリンA(ヒト)とは結合するが、サイクリンBとは結合しないことから、A型サイクリンと特異的に結合する因子である。XDRP1はリン酸化蛋白質であり、サイクリンAキナーゼに依存してリン酸化される。XDRP1のリン酸化にはサイクリンA-CDKとの結合が必要である。XDRP1をインジェクトした受精卵の細胞分裂は阻害され、XDRP1蛋白質を加えた卵抽出液中では、サイクリンAの分解が選択的に阻害された。また、XDRP1の出芽酵母ホモログDSK2発現による生育阻止を抑圧するサプレッサーを分離してその変異を同定したところ、プロテアソームのサブユニットのPRE2,PRE9,RPN1,NAS2であることが明らかになった。これらの結果から、XDRP1/DSK2は蛋白分解経路とユビキチン経路とプロテアソム間をリンクして、サイクリンAの分解を負に制御する抑制因子ではないかと推測される。
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