研究概要 |
癌細胞の増殖・浸潤に関与する活性酸素生成型NADPHオキシダーゼの活性化には、オキシダーゼ特異的シグナル伝達蛋白質(p47^<phox>,p67^<phox>とp40^<phox>)が移行して、細胞膜に存在する酵素本体シトクロムb_<558>(b_<558>)と相互作用する必要がある。 平成12年度は以下のような成果を得た。 (1)b_<558>と細胞質因子の相互作用は、p47^<phox>SH3ドメインとP22^<phox>(b_<558>の小サブユニット)の細胞質領域との結合に依存するが、p47^<phox>C末領域の3つのセリン残基(Ser-303,304,328)のリン酸化が、SH3ドメインのunmasking、p22^<phox>との結合、及びオキシダーゼ活性化能誘導に必要であることを示し、更にアラキドン酸がリン酸化と協同的に働いてP47^<phox>の構造変化を引起こしオキシダーゼを活性化することを明らかにした。 (2)p40^<phox>は休止時細胞でp67^<phox>と会合しているが、これは新規なドメイン間(それぞれPCモチーフとPB1ドメイン)の新しいタイプの蛋白質間相互作用によるものであること、この結合がオキシダーゼ活性化を正に制御していること等を示した。PB1ドメインは酵母のシグナル伝達蛋白質Bem1pにも存在し、その役割を明らかにすると共に、その3次構造決定に成功した。 (3)p47^<phox>のN末領域に新規ドメイン(PB2ドメイン)を見い出し、その3次構造決定すると共に、PB2ドメインがPIP結合ドメインであり、p47^<phox>の膜移行に必須であることを明らかにした。 (4)種々の癌細胞に発現している新規な活性酸素生成型NADPHオキシダーゼ(NOX4)を同定しそのcDNAクローニングに成功した。また、NOX4が腎癌細胞の増殖制御に関与することを見い出した。
|