研究概要 |
本年度はラット褐色細胞腫(PC12),ヒト肺神経内分泌癌から樹立した細胞株、血球系細胞等の系で癌抑制遺伝子、細胞周期制御因子蛋白の過剰発現、発現抑制による分化やアポトーシスの誘導の有無、その際下流で機能する分子の解析を行った。 1)PC12のNerve growth factor(NGF)による分化過程で癌抑制遺伝子蛋白APCの発現は亢進する(Biochem.Biophys.Res.Comm.1996)。逆にアンチセンスベクター導入実験により、APCは分化の初期段階に必須であるが、分化形質の保持には不要である事を明らかにした。(Biochcm.Biophys.Res.Comm.2000) 2)PC12のNGFによる分化はcdk2,cdc2単独の過剰発現で阻害される。しかし、アンチセンセや特異的阻害剤を用いた実験から分化誘導にはcdk2,cdc2両方の活性の抑制が必要であった。つまりPC12細胞の分化はcdc2,cdk2両方によってredundantに制御されている事が予想された。(J.Biol.Chem.2000,第59回日本癌学会、第23回日本分子生物学会発表) 3)PC12の他,我々が樹立した肺小細胞癌、大細胞神経内分泌癌、血球系、RB蛋白質が不活化した細胞株等を用いて種々のcyclins,cdkの潜在機能を検索した結果、どの株でもcdk4,cyclin D1の過剰発現によりアポトーシスが誘導された。この事よりcdk4,cyclin D1は比較的普遍的なアポトーシスのメディエーターとして機能しうる可能性が予想された。(2000年、第59回日本癌学会、第23回日本分子生物学会発表) 4)3)の系路を解析するためPC12に一過性にcdk4を過剰発現させた細胞を染色後、ソーティングし、親株とのサブトラクションにより変動遺伝子を検索した。その結果、既知のプロテアーゼにホモロジーを有する新規の遺伝子を含む数種の遺伝子がクローニングされ、現在解析中である。(2001年、第24回日本分子生物学会発表予定)
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