研究概要 |
これまでの我々の解析により、TNF receptor-associated factor(TRAF)2/TRAF5ダブルノックアウトマウス(DKO)由来の胎児線維芽細胞(MEF)はTNFによるNF-κBの活性化に障害が認められると同時に、TNF誘導性細胞死に対して感受性が亢進していることが明らかとなった。その分子メカニズムを明らかにするために、まずTNF刺激前後における種々の抗アポトーシス遺伝子の発現をDKO MEFと野性型MEFとで比較検討した。Inhibitor of apoptosis(IAP)ファミリーに属するXIAP,cIAPsやBcl-2,Bcl-x_L,CASH/FLIPなどの遺伝子の発現には両者間で差は認めなかったものの、Bcl-2ファミリーに属するA1/Bfl-1の発現がDKO MEFにおいて著明に低下していた。しかしながら、この遺伝子をレトロウイルスベクターを用いてDKO MEFに遺伝子導入したが、TNF誘導性細胞死に対する抑制効果は不十分であった。そこで、その他の抗アポトーシス遺伝子の存在が十分考えられることより、レトロウイルスベクターで構築したcDNAライブラリーをDKO MEFに遺伝子導入し、TNF存在下で培養することにより、TNF抵抗性となるクローンを選択し、新たな抗アポトーシス遺伝子を同定した。BMS(Biological Modulator of TNF-mediated Signalings)と命名したこの遺伝子は964個のアミノ酸よりなっており、3個のコイルドコイルドメインを有していた。既知の遺伝子とは有意なホモロジーを有しておらず、この遺伝子をDKO MEFに遺伝子導入することにより、DKO MEFに見られたTNF誘導性細胞死を完全ではないものの、抑制することが明らかとなった。現在この遺伝子の機能について解析中である。
|