研究概要 |
本研究は,「細胞内動態制御シグナルの分子スクリーニングシステムを確立し,人工遺伝子キャリアーの細胞内動態を最適化する」という新しい戦略を提唱し,細胞内各オルガネラ中の遺伝子量を定量的に測定し,各素過程を定量的に評価できるスクリーニング系を確立するとともに,遺伝子の細胞内動態における素過程の最適化を行い,ウイルスを凌駕する人工遺伝子ベクターを開発することを目的とする. 1.細胞内動態の素過程の分子スクリーニングシステムの構築:細胞内の遺伝子の分布は,細胞膜,細胞質、エンドソーム・ライソゾーム系そして核が主要な分画である.遺伝子を蛍光ラベルして,リポフェクタミンプラスとの複合体を形成させ,NIH3T3細胞へ導入した.経時的に共焦点レーザー顕微鏡により蛍光マーカーを追跡した.蛍光強度の画像解析は浜松ホトニクスのAQUACOSMOSで定量化を行った.検量線を作成することにより蛍光強度をプラスミドの個数に換算し,個々の細胞において各オルガネラ中の量を定量的に評価する方法を確立した. 2.人工遺伝子キャリアーの細胞内動態の素過程に関する最適化:遺伝子の細胞内動態の中でも主要なバリアーの一つであるエンドソームから細胞質中への遊離過程に着目し,エンドソーム遊離過程を促進させるソーティング素子として,ウイルス由来の膜融合ペプチドGALAを合成した.GALAをリポソームの水層に封入したところ,顕著な促進効果は見られなかった.そこで,GALAを脂質誘導体とし,リポソーム膜に封入した.その結果,リポソームに封入した水層マーカーの細胞質中への遊離を顕著に促進させることが明らかとなった.
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