研究概要 |
チューブリンに作用を示す化合物は、DNA複製を阻害する多くの抗癌剤が効力を失った癌に対しても有効であると期待されている。これまでに広範囲な天然物を材料として微小管脱重合阻害活性を指標としてスクリーニングを行い、日本産イチイから顕著な活性を示す数種のタキサン化合物を単離してきた。また、タキサン化合物のいくつかに多剤耐性癌細胞に対する克服作用のあることも見い出した。そこで本研究では、天然物材料として、ブラジル産薬用植物および海洋性真菌を取り上げ、これらの生物からチューブリンに対して作用を示す物質の探索を行うとともに癌の多剤耐性克服作用についても検討し、新しい抗腫瘍物質を探索および開発することを目的として研究を行った。以下に本年度の研究成果の概要を報告する。 チューブリン重合阻害ならびに微小管脱重合阻害活性を指標として種々の天然物より活性成分の検索を行った。1)ブラジル産薬用植物Echinodorus macrophyllusの葉部より、新規ラブダン型ジテルペノイドChapecoderin A〜Cおよび新規含窒素クレロダンジテルペノイドEchinophyllin A〜Fを単離した。2)海洋生物より分離した真菌より、新規アントラサイクリン系化合物Seragakinone A、新規フェナレノン化合物Sculezonone A,Bおよび1,3-ジオキサン環を有する新規化合物Coruscol Aを単離した。これらのうちのSculezonone Aには顕著なDNAポリメラーゼ阻害活性が認められた。3)日本産イチイTaxus cuspidataより単離したタキサン化合物Taxuspine Cに、P-糖蛋白質発現癌細胞に対してベラパミルよりも強い薬剤感受性増強作用を見い出した。
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