研究概要 |
カスパーゼは,発がんとも深く関わるアポトーシスにおいて働く一連のプロテアーゼで,アスパラギン酸残基をC末端に持つポリペプチドを切り出す.本研究では,活性型カスパーゼあるいはその標的タンパク質に対する切断部位特異抗体を作成し,ヒト末梢血細胞や培養細胞系でがんの新しい診断法を目指したin situ解析を行った.カスパーゼによって切断されたポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)に対する切断部位特異抗体を用いてアポトーシスを誘導した培養細胞でのPARPの動態を観察することに成功した.その結果,(1)PARPは核で切断される,(2)切断で生じたDNA結合領域は核にとどまる,(3)触媒領域断片はアポトーシス進行とともに細胞質に遊離する,そして(4)アポトーシスにおけるPARPの動態は染色像によって少なくとも2つの段階に分けられることが判明した.また,Fas抗原の下流で活性化/プロテオリシスを受けるカスパーゼ8やその阻害タンパク質FLIPに対する切断部位特異抗体を使うと受容体を介したアポトーシスを起こしている細胞の選択的染色が可能であった.これらの抗体は組織細胞染色やイムノブロッティングだけでなくフローサイトメトリーにも利用できることがわかった.さらに,好中球アポトーシスに特異的なエラスターゼ切断型アクチンに対する抗体も確立し,種々の細胞が混在する病態組織標本を解析するための基盤が完成した.
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