研究概要 |
我々は活性化あるいは増幅されたがん遺伝子に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチド(AS ODN)を用いて白血病細胞の増殖抑制とその機序を検討、AS ODNの作用機序、細胞膜透過性や至適培養条件、標的配列の選択基準について多くのノウハウを蓄積してきた。従来のホスホロチオエート型AS ODNでは非特異的作用があり、これを克服するためにキメラ型AS ODNを作製して、血液細胞、白血病細胞の分化・増殖に及ぼす影響とその機序を検討し、以下の諸点を明らかにした。 (1)アンチセンス核酸の分子設計:あたらしく考案したホスホロチオエート結合とホスホジエステル結合からなるキメラ型アンチセンス核酸分子を合成し、その精製方法を確立した。 (2)上記のキメラ型アンチセンス核酸分子は非特異的に蛋白質と結合したり、Bリンパ球を非特異的に刺激するなどの非特異的作用や非アンチセンス作用を示す程度が少ないことを示した。 (3)カチオン性脂質DOTAPをもちいた細胞内へのアンチセンス核酸分子の取り込み効率の改善:カチオン性脂質DOTAP(N-[1-(2,3-Dioleoxyloxy)propyl]-N,N,N-trimethyl-ammoniummethylsulfate)をもちいてアンチセンス核酸分子を細胞内に効率よく取り込ませることに成功した。 (4)キメラ型骨格をもったEPOレセプターに対するAS ODNをもちいて赤芽球系細胞においてEPOが自己産生されることを見い出した。 (5)赤白血病の増殖にEPOのオートクライン産生が関与し、EPOR AS ODNによりアポトーシスに誘導されること。 (6)トロンポポエチン(TPO)・レセプターに対するキメラ型AS ODNをもちいて巨核球系前駆細胞においてTPOが自己産生されること。
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