研究概要 |
本研究では、肺癌の同所性移植による転移病態モデルの作成とそれを用いて転移機序を解析することにある。 1.ヒト非小細胞肺癌を同所性移植することにより、原発性肺癌の形成とともに、癌腫によりリンパ節あるいは肺内転移を引き起こすことを明らかにし、臨床特性を比較的反映した病態モデルを作成することに成功した。 2.転移機序を検討する目的で、癌細胞株、移植部位あるいは転移部位の腫瘍からRNAを回収しRT-PCR法により転移・浸潤あるいは血管新生関連分子(MMPs,uPA,VEGF,HGF,サイトカインなど)のmRNA発現および各特異抗体を用いて蛋白質レベルでの発現を調べた結果、リンパ節転移を生ずる癌細胞は、MMP-2,MT1-MMPの発現が亢進していること、肺内転移を引き起こす癌細胞は、HGFの受容体であるc-METが強く発現していること、さらにはHGFで処理することにより基底膜への浸潤能が増強することを見い出した。これらの分子の発現が肺癌細胞の転移様式(リンパ節あるいは肺内転移など)に関連し規定している可能性が示された。 3.作成された本肺癌病態モデルを用いて、抗腫瘍・抗転移効果を有する既存の薬物の評価ならびに新たな分子標的薬物の探索を検討する前段階として、制癌剤CPT-11と黄連、黄柏などの生薬に含まれているベルベリン(止瀉作用を有する)との併用効果を検討した結果、移植部位の腫瘍の増殖及びリンパ節への転移に対して、各単独投与群に比較して相乗的な抑制効果を示した。
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