研究概要 |
我々はc-kitに恒常的活性化変異が存在することを見い出したが、このc-kit活性化変異は、主としてkinase領域とjuxtamembrane膜直下領域領域に認められた。現在までに、c-kitに恒常的活性化変異は、骨髄異形成症候群、mastocytoma、急性骨髄性白血病患者、消化器系のカハール細胞由来消化管ストローマ腫瘍などで報告されている.一方、KIT陽性の造血器腫瘍であるsinonasal natural killer/T-cellリンパ腫について,本国および中国の症例の病理標本よりDNAを抽出し,SSCP法を用いて変異の有無を検索すると、合計23例中 12例にKITのexon11あるいはexon17に点突然変異が検出され,特にexon17ではコドン825のValがAlaに置換する変異が高率に認められた.しかし、このVal825Ala変異KITレセプターは、in vitroでは恒常的活性化能はほとんど認められなかった.現在,基質特異性の変化などにより増殖優位性を獲得する可能性について検討中である.また我々の研究から,活性化変異型KITによる腫瘍化シグナルは特にras-MAPK系に強く依存するなど,正常型とは異なることが示唆され。そこで、活性化変異KITを分子標的に選択的阻害作用を持つ薬剤を検索した.一群の合成チロシンキナーゼ阻害剤であるtyrophostinについて,野生型および変異型KIT導入細胞におけるKITの活性,増殖阻害能,アポトーシス誘導能等に与える影響について検討したところ,tyrophostin AG1296は野生型やkinase領域変異に比べ膜直下領域活性化変異をより低濃度で阻害し,より有効にアポトーシスを誘導することが確認された.現在、その詳細な分子機構を検討中である。
|