研究概要 |
【目的】AMLにおける新たな予後不良因子としてPP1の発現異常が関与しているかどうかを明らかにするために,1985-1999年に採取した白血球数10,000/mm^3以上の成人AML患者46症例の芽球細胞PP1ホスファターゼ活性を解析し,AML症例の臨床データ,治療成績,生存期間などとの関連性をレトロスペクティブに統計解析した。【結果】(1).芽球PP1活性は,年齢<55歳,末梢白血球数<100,000/mm^3,または予後良好とされる染色体異常(t(8;21),t(15;17),inv(16))では有意に高値であった。(2).AML症例を芽球PP1活性0.15nmol/min/10^8cellsの活性を有する高PP1活性群(35例)と<0.15nmol/min/10^8 cellsの低PP1活性群(11例)の2群に分類すると,低PP1活性群の予後(overall survivalおよびdisease-free survival)は有意に短縮していた。低PP1活性群および高PP1活性群における臨床的な特徴を解析すると,化学療法寛解率では有意差は認められなかったが,低PP1活性群は,高PP1活性群に比べ有為に年齢が高く,FAB分類でみると,高PP1活性群では,M3,M4,M5が多かった。また,低PP1活性群において,末梢白血球数100,000/mm^3,血清LDH500IU/lの症例が有意に多く認められた。さらに,予後が良い染色体異常とされているt(8;21),t(15;17),inv(16)は,いずれも高PP1活性群においてのみ認められた。【考察】成人AML患者芽球のPP1活性の低下は,化学療法による生存期間が有意に短縮しており,芽球PP1発現レベルがAMLの病態,治療予後に深く関与している可能性が考えられた。
|