研究課題
特定領域研究
近年の研究から、慢性的炎症が多くのがんの発症および進行の要因となっていることが示されてきている。炎症反応に中心的役割を果たすサイトカインのtumor necrosis factor(TNF)、およびインターロイキン1(IL-1)は、異物の侵入あるいは外傷によって産生され、炎症にかかわる遺伝子発現を誘導する。炎症にかかわる遺伝子には、がんの発症進行に密接に関係する細胞生存因子および細胞外マトリックスの分解因子が含まれる。これまでに、TNF/IL-1による遺伝子発現の分子機構については、TNF/IL-1がそれぞれのレセプター複合体を介して転写因子であるNF-κBおよびAP1を活性化し遺伝子発現を制御することが明らかになっていた。しかし、レセプター複合体と転写因子の間のシグナル伝達経路については十分に解明されていない部分が残っていた。われわれは、本研究において、TAK1 MAPキナーゼ・キナーゼ・キナーゼ(MAP3キナーゼ)がTNF/IL-1レセプター複合体と相互作用し、NF-κBおよびAP-1の活性化の両方に働く必須のシグナル因子であることを発見した。TAK1はMAP3キナーゼとしてMAPキナーゼカスケードを介してAP-1の活性化をするだけでなく、NF-κBを活性化に働くIκBキナーゼも活性化することを明らかにした。さらに、TAK1の結合因子であるTAB2およびTAB3を新たに同定し、これらがTNF/IL-1レセプター複合体とTAK1をつなぐアダプターとして働き、TAK1の活性化に必須の因子であることを発見した。これらの発見は、炎症さらには炎症の関わるがんの発症進行を制御する薬剤開発のための新たなターゲットを提供するものと考えられる。
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