研究課題
基盤研究(A)
先天性腎尿路奇形(CAKUT)の発症機序を明らかにする目的でいくつかのCAKUT発症マウスモデルを検討した。Bmp4+/-、Foxc1-/-、およびAgtr2-/Yの変異マウスではヒトCAKUTに形態的に類似した異常形質が認められ、胎生期にさかのぼって解析したところ、このすべてにおいて初期尿管芽形成の位置異常が認められた。特にBMP4を用いて初期尿管芽形成の位置決定機序を解析したところ、BMP4は尿管芽形成の最も重要な誘導因子であるGDNFの作用を拮抗阻害することにより、異所性尿管芽の形成を抑制することが明らかとなった。これまで異所性の初期尿管芽形成こそがCAKUTの多様な形態異常の原因であるという仮説が提唱されてきたが、この仮説を検証する目的で、同一個体内に異所性尿管芽と正常尿管芽を同時に有するFoxc1の変異マウスの解析を行った。その結果、異所性尿管芽は尿管の形態異常と腎の低形成の原因となりうるが、CAKUTに特徴的な多嚢胞性異形成腎の原因とはなり得ない事がわかった。Bmp4+/-では多嚢胞性異形成腎、尿管形態異常や重複腎尿路等の多彩な腎尿路奇形を呈する。これらの異常発症機構を解析した結果、BMP4は尿管芽形成の位置決定以外にも、実に様々な腎尿路の発生調節機能を有することが明らかとなった。すなわちBMP4は1)尿管芽の形成を抑制する一方で、形成された尿管芽に対してはその伸張反応を刺激する。2)後腎間葉組織に作用し、その細胞死を抑制し後腎間質間葉細胞の成長を促進する。3)尿管周囲間葉細胞に作用し、尿管平滑筋の誘導に寄与する。4)さらに糸球体上皮細胞に発現するBmp4は糸球体血管係蹄の形成に関与する。したがってBMP4は尿排出器官形成の多機能調節因子と理解することができ、この機能の多様性がCAKUTにおける解剖学的多様性に通ずると理解された。
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