研究課題/領域番号 |
12307022
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
内分泌学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松澤 佑次 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70116101)
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研究分担者 |
中村 正 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90252668)
山下 静也 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (60243242)
船橋 徹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60243234)
酒井 尚彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80294073)
平岡 久豊 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00273681)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
40,190千円 (直接経費: 35,600千円、間接経費: 4,590千円)
2002年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2001年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2000年度: 20,300千円 (直接経費: 20,300千円)
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キーワード | 内臓脂肪 / adipocytokine / adiponectin / aquaporin adipose |
研究概要 |
糖尿病や動脈硬化疾患などcommon disease共通の発症基盤として、過栄養による脂肪蓄積が大きな位置を占める。私達は腹腔内内臓脂肪蓄積が上記病態と密接に繋がり、内臓脂肪の分子特性を明らかにすることがcommon disease発症機構解明に貢献すると考え脂肪細胞発現遺伝子解析を行った。その結果単にエネルギー備蓄細胞と考えられてきた脂肪細胞が多彩な生理活性物質(adipocytokine)を分泌する内分泌細胞であることを見い出した。本研究の目的は、栄養状態に応じて活発に増減する脂肪細胞が、巨大な内分泌臓器としてadipocytokineを分泌し生態防御に貢献するが、肥満になると分泌が変化し、栄養状態と関連するcommon disease発症に関わること(脂肪細胞中心仮説)を証明することである。本研究では、まず私達が発見したadiponectinについて、その生理作用と病態における意義を検討した。1)Adiponectinは血管傷害時に局所に集積する性質を持ち、血管内皮細胞の接着分子発現や、平滑筋細胞増殖、マクロファージの泡沫化、サイトカイン分泌を抑制するいわゆる抗動脈硬化作用を有した。筋細胞に対してはインスリン感受性増強作用を示した。2)Adiponectinはヒト血中に高濃度で存在するが、肥満、特に内臓脂肪蓄積時には血中濃度が低下し、冠動脈疾患やインスリン抵抗性状態ではBMIを考慮しても血中濃度の低値を認め、過栄養によるadiponectin分泌不全がcommon disease発症の分子基盤となると考えられた。3)遺伝子スクリーニングにより見出された、血中濃度低下を伴うミスセンス変異例はメタボリックシンドロームの形質を示し、動脈硬化疾患の頻度も高く、本分子を遺伝的に欠損するマウスは、食事負荷により強いインスリン抵抗性が惹起され、内皮傷害により強い血管内膜肥厚が生じた。つまり本分子の血中濃度が一義的に低下することがcommon disease発症に繋がることが示された。4)一方動脈硬化を好発するモデルマウスにAdiponectinを高発現し血中濃度を上昇させると粥状動脈硬化巣の進展が抑制され、ヒトにおいても血中adiponectin濃度の高い群は、心血管イベントや糖尿病発症率も低いことが示された。これらの検討より脂肪細胞はadiponectinという抗動脈硬化、抗糖尿病作用をもつ生体防御分子を分泌しているが、過栄養による分泌不全がcommon disease発症に関わることが初めて示され、adiponectinが過栄養と病態を繋ぐ重要な分子基盤であることを明らかにしたとともに、common disease発症における脂肪細胞中心仮説の妥当性が証明されたと考える。本研究ではさらに新規水チャネル分子として同定したAquaporin adiposeが、脂肪細胞においてグリセロールチャネル分子として機能することを示し、これまで明らかでなかったグリセロール代謝の分子機構を明らかにした。グリセロールもまた脂肪細胞から分泌される生理活性物質として重要であり、脂肪細胞の分子生物学的機能特性と病態における調節異常を明らかにしたことによって、過栄養状態におけるcommon disease発症機構解明に大きく貢献し得たと考える。
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