研究課題/領域番号 |
12354007
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
濱口 宏夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00092297)
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研究分担者 |
甲田 英一 国家公務員共済組合連合会立川病院, 内科部長(研究職) (80101989)
加納 英明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70334240)
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
丹治 宏彰 HOYA株式会社, 取締役戦略企画室長(研究職)
伊藤 利昭 浜松ホトニクス株式会社, 中央研究所, 専任研究員 (30393995)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
44,300千円 (直接経費: 38,900千円、間接経費: 5,400千円)
2002年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2001年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2000年度: 20,900千円 (直接経費: 20,900千円)
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キーワード | 近赤外ラマン分光 / 生体ラマン分光 / 顕微ラマン分光 / 臨床診断 / 癌診断 |
研究概要 |
浜松ホトニクスによって新しく開発された、InP/InGaAsP光電面のマルチチャンネル光検出器と、Nd : YAGレーザーの1.06μmの発振線を用いた卓上型近赤外マルチチャンネルラマン分光計のプロトタイプを製作した。この装置は、従来のFT-ラマン装置に比較して少なくとも1桁以上高感度であり、十分に実用に耐える性能を有している。装置の開発と平行して、近赤外ラマン分光でのみ可能な新しい実験に挑戦し、数多くの極めて興味深い結果を得た。1)ヒト組織のラマン測定:これまで行っていたヒト組織標本の測定をさらに発展させ、手術直後の切除片をホルムアルデヒドで処理することなくそのまま測定した。正常および癌化肺組織のラマンスペクトルが顕著に異なることを確認し、すでに得られていた標本による測定結果が、ホルムアルデヒド処理の影響を受けていないことを示した。近赤外ラマン分光による癌の臨床診断の実用化を目指して、光ファイバー光学系を設計中である。2)酵母生細胞の時空間分解ラマン測定:He-Neレーザーを用いた顕微測定装置により、生きた酵母の細胞のin vivoラマンスペクトル測定に成功した。蛋白質、リン脂質、多糖類などに由来する多数のラマンバンドを明瞭に観測し、細胞内の部位によってラマンスペクトルが大きく異なること、またそれらが細胞周期によって顕著に変化することを見い出した。このような細胞周期に伴う物質変化を、in vivoかつ分子レベルで観察したのは本研究が初めてである。3)蛋白質、核酸試料の蛍光除去ラマン測定:蛋白質や核酸試料のラマン測定では、試料中の夾雑物からの蛍光に妨害されて、スペクトルを得ることが困難な場合がしばしばある。近赤外ラマン分光を用いればこの蛍光による妨害を回避することができる。上記のプロトタイプ分光計を用いて、いくつかの典型的な蛋白質や核酸の測定を試み、高いS/N比のスペクトルを得ることができた。とくに、薬物と核酸の相互作用による核酸の構造変化の様子を、ラマンスペクトルにより極めて明瞭に捕らえることができた。以上の実績から、本研究によってラマン分光の生物学、医学への応用のポテンシャルが格段に高まったと結論することができる。
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