研究概要 |
1.2-3次元結晶 2次元結晶(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4の最低励起子がほぼ理想に近い2次元ワニア励起子であることを初めて実験的に証明した。また,その束縛エネルギーはいわゆる誘電性閉じ込め効果によって増強されていることも同時に示した。2-3次元結晶においては,サイズ依存性を系統的かつ定量的に調べ,空間的閉じ込めと誘電性閉じ込めが有効に作用していることを明らかにした。さらに,群論に基づいて詳細な解析とバンド計算によって,この物質の電子構造の全容をほぼ解明することができた。巨大振動子を有する励起子の下に偏光選択則の異なる励起子と光学禁制な三重項励起子が存在すること,これらが励起子分子の緩和に影響を与えていることも見出した。 2.1次元結晶 点共有1次元結晶[CH_3CS(=NH_2)NH_2]_3PbI_5の光学スペクトルを測定し,きわめて1次元性の強い励起子が存在することを示すとともに,群論に基づいた考察によって偏光選択則を含めほぼすべての準位の帰属を明らかにした。また,励起子が自己束縛し,きわめて大きなストークスシフトが観測されること,励起子の電子正孔間の交換積分の大きさが70meVときわめて大きいことがあきらかとなった。また,バンド計算の結果と比較することによって,ヨウ化鉛八面体の一次元鎖を形成する際の共有様式の違いや格子の歪みがバンドギャップの大きさに影響を与えていることがわかった。 以上の研究項目を通じて,ヨウ化鉛系低次元結晶の励起子・励起子分子の特性について多くの新しい知見を得,この物質群の物性の統一的理解へ前進できたと考えている。
|