研究課題
基盤研究(B)
(1)これまで発生された非破壊パルス磁場の記録は80.3T、そのパルス幅は約8ミリ秒であった。マグネットの多層化を進め、内部補強を行い、最高磁場を80.8Tまで伸ばした。パルス幅も約25ミリ秒と大幅に長くなり、金属の単結晶試料を用いた測定が容易になった。また、実際の測定を通じて本マグネットの寿命と信頼性を調べ、67.5テスラの磁場発生を40回以上行うことが出来た。(2)マグネットの外部補強に関して、外径の最小化を行った。パルス幅が7ミリ秒程度のショートパルスマグネットでのこれまでの補強は、内径が60mmφで外径が150mmφであった。外径を70mmφまで小さくすると、約50T発生時に補強材が破壊されたが、90mmφであれば70T発生に耐えることが分かった。このため、現在は外径を100mmにして使用している。これの利点は、冷却にすぐれていることである。60Tの磁場発生を15分間隔で行える事が分かった。(3)本補助金で購入した希釈冷凍器用クライオスタットの内部に改良型の磁化測定用ピックアップコイルを取りつけた。上下方式の従来型では、磁場の不均一がデータに現れ、ダイナミックレンジを上げることが不可能であった。同軸型の使用により測定精度が飛躍的に向上した。(4)ザイロンによる補強を高圧発生装置に応用することで、高圧下パルス強磁場磁化測定の高感度化に道が開けた。これまでの高圧発生用ピストンシリンダーセルはCu-Be製であり、内径2mmφで外径6mmφであった。この外径を3mmφまで削り、代わりにザイロンを巻き付けたところ元と同じ圧力を発生できた。これらの技術を確立して、より精密な物性測定を行う予定である。(5)パルス強磁場と希釈冷凍機を組み合わせた磁化測定により様々な成果が得られた。具体的には、ハルデン物質NDMAZの磁場中磁気秩序状態における磁化過程を測定して磁気相図の作成を行った。また、スピンギャップ系物質SrCu_2(BO_3)_2の磁化プラトーを極低温で観測して、1/8、1/4、1/3プラトーの存在を明確に示した。強相関伝導系物質Ybモノプニクタイドでは、磁化過程に異常が観測された。
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