研究概要 |
1999年台湾集集地震を起したShelungpu断層を貫く南北2本のボーリングコアを解析した結果,以下のことが判明した. 1.南部のボーリングの深度176m付近に,厚さ2mの粉砕されたシュードタキライト層が形成されていた.シュードタキライト破片を分析した結果,リサイクルした古いシュードタキライトの破片がより新しいシュードタキライト中に普遍的に含まれていること,ごく一部が1730℃を越え,溶融度が著しく高いものの,多くは溶融度が低いことが判明した. 2.北部のボーリングの深度223-227m,および283-320mにはShelungpu断層の剪断帯がある.この剪断帯の片側に接して厚さ1-3cmの軟質粘土層が,もう一方の側には厚さ数10cmから1mのモザイク状断層角レキを伴っている.注目すべきことは,後者を貫く粘土脈がほぼ普遍的に認められ,断層粘土層中の孔隙圧が瞬間的に(おそらくはcoseismicに)異常に上昇したことを示唆する. 3.1999年台湾集集地震の際には,Shelungpu断層南部では変位は大きくはないものの,高周波が放射された.これに対して北部ではすべりが高速で変位量が12mにも達したものの,高周波の放射を伴わなかった.断層岩の性質から判断すると,南部では低溶融・高粘性の溶融体の形成がすべりを抑制し,北部ではBrodsky and Kanamori (2001)のelastohydrodynamic lubricationが効果的に作動したものと理解できる. 各地の断層岩を解析し,ガウジ粉砕とfluidizationを研究し,以下の事を明らかにした. 1.粉砕は粒径分布のフラクタル次元が2.5から開始し,その後単調増加する.粒子の充填はフラクタル次元が2.5のときに最も密になるので,粉砕過程そのものがslip-weakeningメカニズムである. 2.粉砕破片対の発見確率を指標として,fluidizationの有無を判定する新しい方法を開発した. 3.Fluidizationの原因を検討した結果,Brune et al. (1993)のnormal interface vibrationが最も有力な候補であり,それが自然界で作動していることを支持する2つの証拠を発見した. 4.粉体科学の知識に基けば,ガウジがfluidizeすると,断層面の摩擦抵抗はほとんどセロになる.
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