研究概要 |
1)メコンデルタの上部更新統〜完新統のコア試料について、その堆積相解析と年代測定を中心に進めた。その結果、メコンデルタの発達史の概要が明らかになった。現在の地表面の堆積地形として,デルタ上部から中央部は河道とその周辺の自然堤防地域,氾濫源地域,デルタ下部の海岸砂丘とその間の塩水湿地,マングローブ沼沢地地形に分けられる。このうち,上部は河川卓越のデルタシステム,他方,下部は潮汐および波の影響の強い環境下での形成を示唆している。最終氷期の海面低下期に形成された不整合面で更新統を覆う完新統は厚さ10〜70mに達する。コア試料の解析から認定された10の堆積相と56の^<14>C年代値の時空分布をもとに、各コア採取地点における堆積曲線(年代-深度分布曲線)、プログラデーション津度等を含めた堆積システムの変遷が明らかにされた。堆積システムは大きく2つのステージに区分される。前期のアグラデーション期と中・後期のプログラデーション期であり、後者はさらに潮流卓越システム期と波浪-潮流混合期に区分される。アグラデーション期は最終氷期に形成された河谷を海面上昇に伴って埋積するシステムである。プログラデーション期は最大海進期以降、浅海を埋め立てていくデルタシステムの発達期である。 2)デルタ下部の浜堤列平野の形成過程に関してより詳細な解析を行った。砂丘砂のOSL年代測定を試みるとともに、粒度・鉱物組成分析、地形解析を行った。その結果、4000年より古い砂丘列群と2000年より新しい砂丘列群に大きく大別され、それぞれは特有の鉱物組成を有することが明らかになった。 3)ユニブームを用いてメコン川の主要河川と水路に沿った音響断面を総延長700kmにわたって観測した。陸上掘削資料との対比からこの音響断面中に認められる広域的な不整合は最終氷期極相期の海面低下に伴う不整合であり、上位の上部更新統〜完新統は厚さ20〜40m、時に70mに達することが明らかにされた。 4)メコン川支流、コーチェン川において塩水くさびの遡上状況についての予察的調査を進めた。 引き続き、メコンデルタ域での水資源開発を中心に調査を継続する予定である。
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