研究分担者 |
下林 典正 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70235688)
山路 敦 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40212287)
小畑 正明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20126486)
清水 以知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40211966)
堤 昭人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90324607)
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配分額 *注記 |
16,700千円 (直接経費: 16,700千円)
2002年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2001年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2000年度: 11,800千円 (直接経費: 11,800千円)
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研究概要 |
本研究の目的は,変形・透水試験機を用いて,間隙流体が岩石のレオロジー的性質と地震の発生過程にどのような影響を与えるかを実験的に調べることであった.研究対象としては,流体と地震発生の関係を調べる上で重要な断層岩を選んだ.断層帯としては,中央構造線・野島断層・梶尾谷断層・神縄断層・柳ヶ瀬断層・花折断層を取りあげ,間隙圧振動法と簡便な定差圧流量法を用いて,流体循環・化学反応などを規定する浸透率の測定をおこなった.本研究の開始時点では,断層帯の内部構造と浸透率構造を調べた研究は世界でも数例しかなかったが,本研究では上記の断層から採取した約500試料について5,000以上の浸透率の測定値を得た.その結果,浸透率構造は断層ごとに多様であることが明らかになった.地震発生時の断層運動に伴って発生した摩擦熱を間隙流体が吸収して間隙圧が上昇し,断層の抵抗を減らして地震の発生過程に大きな影響を与える可能性が古くから指摘されている(thermal pressurization ; TP).この効果が有効に働くためには断層帯の浸透率が低く上昇した間隙圧が断層帯に保持される必要があるが,本研究の結果は,TPが有効に活用する場合としない場合があることが明かになった.また一連の研究によって,これまでほとんど報告されていない断層岩の貯留係数の測定をおこなって,TPが起こる場合に,断層の強度が低下し続ける臨界すべり量D_cが1m前後に決まることが明かになった.過去10数年間,実験的に決まるD_cと地震学的に決まるD_cの間に数桁の違いがある理由がよくわからなかった(D_cパラドックス).本研究は,断層のすべりにともなう摩擦加熱の影響を考えることによって,D_cパラドックスが解決できる可能性を示した点において極めて重要である.断層のレオロジーに関する研究と地震学的研究を定量的に結びつける研究が,やっと可能になりつつある.
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