研究概要 |
花崗岩貫入岩体の固結に伴い,マグマから分離したマグマ水は高塩濃度の塩化物水溶液で,炭酸ガスなどの気体成分や重金属濃度も高濃度であり,このような溶液が鉱床の生成に密接に関与していると考えられている。本研究ではマグマから分離した熱水が関与して生成した鉱床について以下の研究を行った。 モロッコ北東部のベニボウイフロール磁鉄鉱鉱床は,泥質石灰岩に貫入した花崗閃緑岩周辺に発達するスカルンに伴われる鉱床で,北アフリカでは屈指の規模を有する。本鉱床の成因について,とくに貫入岩と鉱床生成の因果関係については諸説があり混乱していた。カリウム-アルゴン法による年代測定の結果,花崗閃緑岩とスカルン鉱物の年代がほぼ一致したことから,花崗閃緑岩から分離した熱水が関与して生成した鉱床だと結論される。流体包有物より得られる情報から,熱水は高温(最高500℃),高塩濃度(最高75wt%)であったと推定され,さらに熱水から沈澱したスカルン鉱物の酸素同位体比はマグマ水の関与を強く示唆した。このような高温・高塩濃度のマグマ水起原の熱水が多量の鉄を運搬したことにより高品位の磁鉄鉱鉱床が生成したと結論できる。 北部北上帯に位置する変成層状マンガン鉱床に伴われるマンガン珪酸塩鉱物の酸素同位体比から,マンガン鉱床の熱変成機構の特徴を解明した。本鉱床は花崗岩体直上のルーフペンダントに位置し,花崗岩貫入時に高度の熱変成を受けており,マグマから分離した熱水の痕跡が残っていると期待された。鉱床内のごく近い位置に分布するマンガン鉱物間で酸素同位体の分配は平衡に達していない事が明らかとなった。このことは熱変成がマグマ水のような流体が殆ど存在しない環境で起ったことを示唆する。
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