配分額 *注記 |
13,800千円 (直接経費: 13,800千円)
2002年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2001年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2000年度: 9,600千円 (直接経費: 9,600千円)
|
研究概要 |
ラセン型π電子系であるヘリセンジオールのラセミ体を合成することができた。さらに,酵素を用いて,光学活性体の分割に成功した。これらヘリセン分子は周りの環境に応じて伸び縮みをすることによりラセンのピッチを変化させてゲスト分子を取り込むという極めて特異な性質,機能を見出すことができた。すなわち,ヘリセンジオールのラセミ体結晶では,末端のチオフェン環の二面角は45度であったが,エタノール分子を包接したヘリセンジオールでは,その二面角が38度となり,ラセンのピッチが15%も縮むことがわかった。さらに,右巻きヘリセンジオールでは,分子同士が水素結合により連なり,「四つ葉のクローバー型超ヘリカル構造」を形成すること,左巻きヘリセンジオールが性ホルモンの一種であるテストステロンを特異的に取り込み,1対1のクラスレートを形成することなどを明らかにすることができた。この場合には二面角が34度となり,ラセミ体結晶のラセンのピッチに比べて24%も収縮している。 これらの研究成果は,これまで剛直な非局在電子系と考えられていたヘリセン分子が,周りの環境に応じてその二面角を変化できることを示している。これは,ラセンの伸び縮みによる分子認識と自己集合の最初の例であり,ラセン型π電子系が持つ特異な機能が発現された好例といえる。
|