研究概要 |
本研究では,クラウンエーテル認識部位とピレン蛍光団を適当な長さのアルキルスペーサーで結合させた単純構造の蛍光プローブを設計し,これとγ-シクロデキストリンの分子複合体が,イオン認識によるプローブ分子のγ-シクロデキストリン内での選択的ダイマー形成に基づいて,水中でアルカリ金属イオンを高選択的に蛍光検出できることを見出した。この超分子形成に基づく分子複合センサーの性能は,従来型の分子認識試薬の機能を遥かに上回るものであった。本研究によって,水中での応答に対しプローブ分子の最適スペーサー長が存在することを明らかにし,応答機構の平衡論的解析および蛍光寿命解析を通して,超分子センサーとしての新しい機能解明に成功した。次に我々は,水中で糖を認識できる新しい分子複合体センサーの開発を行った。糖の認識部位となるフェニルボロン酸とピレン蛍光団をアルキルスペーサーで結合させ設計した蛍光プローブは,β-シクロデキストリンとの包接錯体とすることで水に可溶化でき,しかも中性pH条件において,糖を認識し発蛍光型の応答を示すことを見出した。このpH応答プロファイルは,これまでに報告された糖認識プローブのものとは全く異なるものであった。応答機構を詳細に調べた結果,ボロン酸型蛍光プローブ/β-シクロデキストリン複合体センサーの応答は,ピレンドナーからフェニルボロン酸アクセプターへの光誘起電子移動反応が,糖とボロン酸とのアニオン錯体形成に阻害されることに基づく全く新しい機構であることを明らかにした。錯生成定数を算出するために重要な解析式を誘導し,単糖類に対する選択性を調べた結果,フェニルボロン酸が本来有するフラクトース選択性が得られることがわかった。
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