配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
2003年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2002年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2001年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2000年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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研究概要 |
細胞内共生は,単一の細胞内に2種以上の生物のゲノムとその遺伝子発現系が調和的かつ相互依存的に共存する現象である.本研究が主たる研究材料としたアブラムシ細胞内共生系においては,宿主昆虫が体内に数十個保有する菌細胞とよばれる巨大な特殊化した細胞の細胞質中に,夥しい数の原核性共生微生物が収納されている.この微生物はBuchnera(ブフネラ)とよばれ,16S rDNAその他についての分子系統学的解析から,元来は大腸菌ときわめて近縁の細菌であり,アブラムシ類との共生は2億年余に及ぶ歴史をもつことが示唆されている.2億年の間に,アブラムシとブフネラという共生の2つのパートナーは不可逆的に相互依存度を高めた結果,現在では,双方とも相手なしには増殖が不可能な状態に到っている. われわれは,これまでほぼ25年にわたって,このアブラムシ細胞内共生系に関して,ブフネラの進化,遺伝子とゲノムの構造,遺伝子発現,さらに細胞内共生の代謝生理学上の意義について研究を行ってきた.この間の研究の過程は4期に分けてまとめることができる.それらのうちで,第3期において,われわれは絶対共生細菌としては世界に先駆けて初めて,ブフネラの全ゲノム解析を行い,その全貌を明らかにすることに成功した.その結果,ブフネラは大腸菌ときわめて近縁であるにも関わらず,後者にみられる遺伝子のうちの6/7を失っていることを初めとして,共生細菌に特異的な性質をいくつも明らかにした.これに引き続いてなされた第4期が本報告書の該当する研究期間である.この期間を利用して,われわれはゲノム解析を通じて存在の明らかとなった遺伝子の発現や菌細胞における宿主側の遺伝子の発現の解析などを行い,25年に及ぶ細胞内共生現象についての研究の締めくくりとした.
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