研究概要 |
1.サブナノメータ分解能を持つ走査型非線形誘電率顕微鏡の開発 本顕微鏡は3階のテンソルである非線形誘電率の分布計測から強誘電体の分極分布を得ることのできる顕微鏡である.今回,新たに開発した高分解型走査型非線形誘電率顕微鏡をもちいて,PZT薄膜中のa-cドメイン及びc-cドメイン壁を計測し,ドメインウォール壁の厚さが1,2格子程度であることを初めて明らかにした.またこれらの結果から第一の目的であるサブナノメータ分解能を持つ走査型非線形誘電率顕微鏡の開発に成功したことを証明した. 2.強誘電体単結晶中の双極子モーメント像(原子分解能での分極像)の可視化 次に,双極子モーメントの可視化の実験を行った.但し,正負の双極子モーメントが単位格子おきに交互に存在する試料は入手が困難であることより,原子分解能で強誘電材料中の分極が観測できれば,事実上双曲モーメントの可視化ができたのと等価と考えビスマス層状構造強誘電体Bi_4Ti_3O_<12>(BIT)(m=3)の層状構造の観測を行った.その結果,SNDMは深さ方向に1原始層オーダーで強誘電性の有無の判別ができることが確認された.また同じく,面内方向に1原子層単位でBITの層状構造が観測された. 3.SNDMシステムを用いた強誘電体記録の基礎的検討 最後にSNDMシステムを次世代超高密度強誘電体記録システムに用いた場合の基本的な特性を調べるため,LiTaO_3単結晶薄板中に極微少なドメインのドットを形成し読みとる基礎的実験を行った. その結果10ナノメートル強の大きさのドメインドットの生成に成功した.この大きさは記録密度に換算して4Tb/inch^2に相当している.また実際的な記録を行いそこでも1Tb/inch^2以上の記録密度を達成した.
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