研究概要 |
本研究は,CMP加工によって発生するSiO_2薄膜表面の微小欠陥をインプロセス計測することを目的として、微小欠陥からの微弱な散乱光を3次元的に自動計測することができる光散乱自動解析装買を試作し,さらに欠陥検出実験を遂行した.その主要な成果は以下のように要約される. 1.電磁波散乱理論に境界要素法を適用することにより,空気,膜,シリコン基板からなる3層問題に対応する光散乱シミュレータを構築し、薄膜表面欠陥の散乱特性を解析した.その結果,適切な受光角を選定し,垂直方向および斜め方向に散乱する散乱光強度の相互関係を考慮することによって,欠陥の幅および深さを独立に分類することができることを明らかにした. 2.FIB(集束イオンビーム)加工によってSiO_2薄膜表面に製作した深さ30nm〜120nm幅250nm〜600nmのスクラッチ欠陥に入射角55.6度のブリュースタ角で入射した結果,上方および後方にも強い散乱光が観測され,その強度はP偏光よりS偏光のほうが高いことが分かった. 3.しかし,P偏光では,欠陥深さの影響が支配的であり,深さ30nm程度の差があっても,敏感に応答することが確認された.すなわち,スクラッチ深さが僅かでも大きくなると散乱光は強くなり,微小スクラッチ欠陥の高精度な深さ計測に適用できることが分かった. 4.欠陥の幅については,散乱光の強度変化は単純に幅の大きさに比例していないことが分かった.しかし,幅と深さの比であるアスペクト比が3程度以上であれば,幅が大きくなるにしたがい散乱光強度が減少する傾向が見られた. 5.付着異物の場合,S偏光においてサイズ100nmの差に敏感に応答すことが確認された.特に前方散乱光におけるサイズに対する差が大きく,100nmと200nm粒径では強度比が5.5倍であった.この結果から付着異物の検出はS偏光で前方散乱光が有利である. 6.スクラッチと付着異物の比較において,付着異物は前方(55°),スクラッチは垂直方向(0°)に強い錯乱光が検出され,ピークを持つ錯乱角の違いから両者を容易に識別できることがわかった.
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