研究概要 |
磁気ディスク表面に塗布されている高分子液体潤滑膜の流動現象の測定を目的に,潤滑膜の境界近傍にマイケルソン干渉縞を形成し,その干渉縞をリニーク型の顕微鏡を用いて画像測定し,画像処理により干渉縞の尾根線を抽出して,潤滑膜の断面形状を二次元画像として測定する方法を開発した.画像ノイズを抑圧するために,干渉縞を画面上に固定するフリンジフォローイング,および階調ノイズを測定画像から差し引く方法などにより,画像ノイズの大幅な圧縮を実現した.さらに,厚さ較正曲線の求め方を定式化するとともに,前面反射を利用する場合には大幅に感度が低下するが,透明ディスクの背面反射を利用すれば,感度の低下がほとんど生じないDLC膜の厚さが存在することを見い出した.磁気ディスクを用いた前面反射,および透明ディスクを用いた背面反射を利用し,潤滑膜の表面流動特性を実測して,前面反射利用の場合には厚さ8nm,背面反射利用の場合には,厚さ2nm程度まで測定可能であることを確認した.二次元計測法をさらに発展させ,位相シフト法を適用することによって,潤滑膜の流動現象を三次元的に計測する方法を実現した.リニーク型マイケルソン干渉系を用い,コンピュータ制御により参照ミラーを微小駆動することにより,位相シフトが可能な高倍率のマイケルソン干渉測定系を構成した.位相シフト法として,測定系の振動に起因する測定誤差を効果的に抑圧できる7バケット法を採用し,ノイズに頑健な振幅・位相変換プログラムを作成し,その有効性を確認した.最後に,実用されている磁気ディスクを用いた前面反射,透明ディスクを用いた背面反射,および溝状テクスチャ付CD-RWディスクの表面反射を利用し,それぞれのディスク上に滴下した潤滑液膜の特徴的な流動現象を観測して,本手法により三次元測定が可能であることを確認した.
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