研究概要 |
LSIチップの高負荷冷却に関して二種類の実験を並行して行った.第一は,自然循環型のチップの沸騰冷却実験装置を用い,FC-72を冷却液として平滑チップおよび表面に30×60,30×200,50×190,50×270μm^2のピンフィンを有す4種類のチップの伝熱性能を調べた.装置は水平蒸発器,供試チップ,立ち上がり管,水平凝縮器,下降管,液過冷却器,圧力調整用のゴム袋から構成され,高さは450mmとした.供試チップの寸法は10×10×0.5mm^3であり,断面が5×14mm^2の水平ダクトの下面に設置される.まず,蒸発器入力と冷却液循環量の関係を調べ,蒸発器入力100-250W,下降管の液柱高さ300mmのときに120-270g/minの循環量が得られることを確かめた.実験は液循環量を150g/minおよび200g/minに固定し,供試チップ上流における冷却液の過冷度を5,10,25,35Kに設定した.各チップの沸騰伝熱特性は基本的にはプール沸騰の場合と同様であり,限界熱流束は過冷度の増加につれて増大した.しかし,その値はプール沸騰に比べて低下した.低下率は平滑面では最大37%,フィン付き面では最大18%に達した.液循環量が150と200g/minの場合を比較すると,核沸騰域の熱伝達率は150g/minの場合の方がいくぶん大きく,一方限界熱流束は最大10%低下した.得られた限界熱流束の最大値は56W/cm^2であった.第二は,プール沸騰熱伝達に及ぼすピンフィン寸法の影響を調べる実験を行った.ピンフィン寸法は,厚さが10-50μm,高さが60-270μmである.液過冷度は0,3,25,45Kとした.ピンフィン付き面の沸騰特性曲線は核沸騰域の勾配が非常に大きく,伝熱面過熱度のわずかの増加で熱流束が急激に増大する特徴を示した.また,限界熱流束点の壁温はLSIチップの許容上限温度である85℃よりもかなり低く保たれた.限界熱流束はフィン高さ,液過冷度とともに増大し,最大値は85W/cm^2に達した.なお,チップの表面積拡大率が同一のとき,限界熱流束の値はフィン寸法が大きいほど増大した.上記の研究に関連して,二件の特許を出願した.
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