研究概要 |
反強磁性/強磁性界面の交換結合について,NiO/NiFeおよび,MnIr/NiFeの2つの系について検討を行い,以下の結果を得た。 (1)NiFe/MnIr二層膜を単結晶MgO(001)基板上に作製し,その結晶構造と交換異方性について調べた。NiFe層,MnIr層ともに(001)面がエピ成長した。成膜中に結晶の[100]および[110]方向に静磁界を加えながら成長させた2種類の試料を作製したが,両者ともに交換異方性の容易方向は[110]方向となった。これは,反強磁性MnIrのスピン構造が,3Qと呼ばれる配列を取っていることに対応している。 (2)NiFe/NiO二層膜およびNiFe/NiO/CoPt三層膜をNiO層厚を変化させてRFマグネトロンスパッタ法により作製した。成膜中には,70Oeの静磁界を加えた。磁化過程および交換結合について調べたところ,NiFe(5nm)/NiO二層膜においては,NiO層厚が10nm以下では,一方向異方性は,現れなかった。しかし,NiFe(5nm)/NiO(^tNiO)/CoPt(5nm)三層膜では,一方向異方性が,NiO層が5,10nmの場合にも,NiFe層のマイナーループに一方向異方性が現れ,その異方性の方向は,CoPt層の磁化方向に依存して変化した。これは,NiFe層とCoPt層が反強磁性のNiO層を介して磁気的に結合していることを示している。三層膜において,NiO層が30nmの場合には,一方向異方性の向きは,NiFe層の成膜中に加えた磁界の方向に誘導された。この界面における交換結合の方向は,成膜中に印加する磁界の方向によって,制御できることも判明した。
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