研究概要 |
本研究は,最近研究者らにより,弾性表面波(SAW)の電気機械結合係数が従来の単結晶に比ベて約10倍大きいことが明らかになったKNbO_3圧電単結晶基板を用いて,次世代情報通信用10GHz帯SAWデバイスを実現することを目指して行われる研究である。そのためには,ラインアンドスペース0.1μmの周期電極を作製する必要があり,KNbO_3に最適なプロセス技術の検討を行った。 KNbO_3は225℃に相転移点が存在するため,作製プロセス中の基板温度を低温に抑える必要がある。そこで,電子線を用いた直接露光において,プロセス温度を低下させる研究を行い,150℃でラインアンドスペース0.1μmのアルミニウムの周期電極をKNbO_3単結晶上に作製することが可能となったが,SAWの送受特性は予想したものではなかった。その原因は,基板の極表面付近の強誘電分極の状態が不均一になっているためであることがことがわかった。KNbO_3は180°分域の他に90゜分域や60゜分域も有するため,走査型非線形誘電率顕微鏡でそれらが計測できるようなシステムの開発が本研究を進めるために必要であるという結論を得た。従来の走査型非線形誘電率顕微鏡は,基板表面に垂直な分極成分を主として計測しているため,面内方向に分極が向いている場合の計測が困難であるため,面内方向の分極成分を計測できる新しいプローブの開発と,走査型非線形誘電率顕微鏡システムの研究が不可欠であると考え,その研究を行った。これにより,面内方向の分極も計測できる走査型非線形誘電率顕微鏡の原型を得ることに成功した。この成果については,近日中に論文として投稿する予定である。 来年度は,本システムを用いて分極の面内方向成分も含めて計測し,基板表面の分極状態が温度と共にどのように変化するかに調べることで,プロセス条件の最適化の研究を引き続き推進する予定である。
|