研究概要 |
本研究では,人工物の設計のモデルに創発性という概念を結び付けることにより,従来人間が果たしている役割を数理化するとともに,より複雑なシステムの設計過程を効果的に支援するための仕組みについて下記の成果を得た. 1.設計過程の基礎数理モデルの確立 BarwiseとSeligmanによる「情報の流れ」の数学的理論を用いて,吉川らによる一般設計学を発展させた形の抽象的設計論の構築を試みた.また設計フレームの形成過程の数学的定式化を行い,設計知識の再利用性を論じ,より創造的な形状デザイン支援が可能なシステムについて考察した.なお,平成12,13年度に「設計論と機能論研究会」を4回開催し,全国から参加者を得た. 2.設計過程への創発的方法論の導入 人間の設計を支援するために遺伝的プログラミングを多目的に拡張し,設計者は得られた設計案から自分の好みに応じたものを選択し,改良を加える設計支援システムを開発した. 3.インタラクティブ・エンジニアリングとしての設計過程の解明 従来は設計者が担っていた創造性をモデル化することを試み,この創造性に基づき設計支援システムのプロトタイプを得た. 4.創発的アプローチによるシステム設計論の評価・検証 多目的遺伝的プログラミングによる線形受動フィルタの設計,遺伝的機械学習アプローチによるスケジューリング・ルールの獲得,自律分散型意思決定モデルの構築などの実例により,提案手法の有効性の評価と検証を行った.
|