研究概要 |
(1)超長期の耐久性に関連のある,イオン溶出・浸透とCSHゲル組織の変成に関する機構の数値解析システムを,DuCOMシステム(熱水分-塩化物-炭酸化-酸化反応に関する高次連成解析システム)に組み込んだ。 あわせて既往の原位置データおよび促進イオン溶出試験データの収集を行った。 (2)セメント硬化体を形成する微細空隙構造内の水分に関する熱力学平衡を再構築し,低水セメント配合特有の持続的な水和反応プロセスを数値解析で予測することに成功した。 (3)普通セメントおよび高炉セメントに関する固定塩化物量と自由塩化物量に関する一般化熱力学平衡モデルを,系統的な実験(数百)を通じて構築することに成功した。従来の定説であった高炉セメントのフリーデル氏塩による固定成分は支配的ではなく,高い吸着力によって塩化物イオンの浸透を遅らせることが明確になった。 (4)通電によって強制腐食させたRC梁のせん断破壊実験ならびに腐食を内在するRC部材のtension-stiffness挙動を実験によって明らかにした。腐食位置が異なることによって,せん断耐力は上昇する場合もあることを実証するとともに,支点鋼材位置での鉄筋腐食は逆にせん断耐力の低下を支配することを見出した。 また,これらはRCゾーニング法と多方向ひび割れモデルによって解析予測が可能であることを検証した。 (5)膨張コンクリートの曲げ部材,一軸引張部材に対して除荷過程を含む繰り返し載荷を行い,引張応力下の膨張コンクリートに特有な非線形挙動を合理的に説明するコンセプトを提案した。ケミカルプレストレスト部材の高いひび割れ抵抗性は,プレストレスによる引張強度の増加のみならず,ひび割れ発生前の変形能力が大きいことにより著しく高くなることを示した。 (6)コンクリート標準示方書に準拠して,コンクリートの配合から基本物性を予測することに特化したシステムをDuCOMを基盤にして開発し,一般に公開を開始した。
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