研究概要 |
[目的]移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり,GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている.しかし既存の電磁波吸収体は,Snoekの限界と呼ばれる周波数限界(共鳴周波数fr)が数GHzに存在し,急激に吸収能が低下する.このため新しい電磁波吸収磁性体の開発が急務となっている.Snoekの理論によればIsが高ければfrも高くなるので,鉄合金など高い飽和磁化の金属磁性材料を用いれば優れた高周波特性が得られる.しかし金属では良伝導性のため表皮深さ以下の微粒子にし,各粒子を絶縁しなければならない.希土類-Fe系合金では水素または窒素ガス中熱処理により不均化反応が生じ,鉄と希土類水素化物または窒化物からなるナノメータサイズの微細組織が形成できる.この方法を用いることにより,鉄微粒子を高電気抵抗の相中に析出させることができ,電磁波吸収体粉末の作製が可能となる.そこで本研究は,不均化反応を利用したGHz帯域対応の電磁波吸収体の開発を目的に,不均化反応条件と磁気共鳴における複素透磁率と電磁波吸収特性との関係について調べた. [結果]1)923Kで窒素中不均化処理後523Kで大気中酸化処理した粉末の樹脂複合体において100nmのαFeがSm酸化物中に分散した2相組織が得られた.2)この樹脂複合体は3.1GHzでμr^n=1.62とカルボニル鉄の樹脂複合体より50%程度高い値を示した.3)整合周波数fm=1.65GHz,整合厚さdm=5.68mmの時,最大の反射損失RL=-56dBが得られた.4)fd積は9.4GHz・mmであり,カルボニル鉄の試料よりも35%小さい値であった.5)シランカップリングして高充填化することにより,さらにfd積を25%低減できた.7)以上よりSm2Fe17化合物の不均化反応により生成する微細αFe組織を利用した電磁波吸収体の可能性が示唆された.
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