研究概要 |
C60を含むPZTゾルを用いることにより,C60をフィラーとする超音波に対して高感度のPZTセラミックスを作製することが可能となる.この目的に沿って研究を進めたところ,PZTゾルにC60の単結晶繊維が生成することを発見し,これを,C60ナノウィスカー(C60NW)と呼ぶこととした.さらに,C60のトルエン溶液とイソプロピルアルコールが作る界面を利用して,C60NWを大量に作製する液-液界面析出法を開発した.この方法によればサブマイクロメートルサイズの直径を持ち,長さが数百マイクロメートル以上のC60NWを容易に得ることができる.また,P123を鋳型とする規則メゾポーラスチタニア薄膜の作製に成功した.これによって,PZTをマトリックスとし,P123をテンプレートとする規則メゾポーラス構造を得るための重要な指針が得られた.イソプロピルアルコールにヨウ素を添加することによって,ヨウ素を含むC60ナノウィスカーの合成にも成功した.ヨウ素添加C60ナノウィスカーは,非線形な電流-電圧特性を示すので,スイッチング素子として有望である.C60ナノウィスカーは,30マイクロメートル以下の曲率半径で180°に折り曲げても破断することが無く,極めて柔軟な構造を持っている.液-液界面析出法によって,C60ナノウィスカーのみならず,C70のナノウィスカーの作製にも成功した.C70ナノウィスカーの転位密度は,C60ナノウィスカーに比べて極めて低く,良好な結晶性を有していることが明らかになった.また,AFMチップによって,C60ナノウィスカーにナノメートルオーダーの幅の溝加工ができることが示された.
|