研究概要 |
Cu-Be合金を力を作用させた状態で時効すると,時効の途中から力が作用していた方向に自発的に変形していく現象を見出した.この自発的変形は時効温度500〜700K程度で起こり,従来の形状記憶合金より高い温度で作動する.また,自発的に変形した合金を1000K程度の温度で再溶体化すると,元の形状に回復する.これらの現象を解明するために,片持ち梁状やコイルバネ状の試験片を準備して,系統的な実験を行った.その結果,Cu-Be合金の部材に圧縮応力を作用させて時効すると,析出が遅滞し,逆に引張応力を作用させておくと析出が促進される.析出が遅滞した部位には,主にγ"相が析出し,また析出が促進された部位にはγ相が析出する.また,単軸引張,単軸圧縮時効実験の結果,引張時効では早期にγ相が析出してさらに自発的に伸張し,圧縮時効ではγ"相が析出して自発的にさらに収縮する.これらの結果から,外部応力作用下での時効による析出物形成状況の変化を通じて,部材の自発的伸張や圧縮の領域が形成され,自発的変形が起こることを明らかにした.
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