研究概要 |
炭化水素燃料を利用する固体酸化物燃料電池の燃料電極での,炭素の析出および電気化学燃焼過程を調べる手法として,in-situ顕微ラマン分光法を適用することを試みた。 1.燃料ガスおよび空気を電解質試料の両面に供給しつつ,高温で燃料電極表面を観察するための雰囲気制御二室型試料加熱装置を試作/改良した。このチャンバによって,熱力学的に規制された電極/電解質界面での炭素析出反応の顕微鏡観察および顕微ラマン分光測定が800℃までの温度で可能であることを実証した。 2.ニッケルグリッド電極/YSZ電解質系にメタンを導入した場合の電気化学燃焼について,生成ガスを分析した。メタンの酸化反応は,水蒸気改質反応によって生じた水素の電気化学燃焼を介して進行することがわかった。炭素の燃焼過程も水蒸気を介する可能性がある. 3.モデル電極とし白金電極,ニッケルグリッド電極をYSZ上に作製し、これらに対してメタンおよび液化石油ガス(LPG, n-butane)を燃料として供給し,炭素析出形態および析出場所について調べた。白金電極で測定したラマンスペクトルに不定形炭素を示す「D-band」およびグラファイト構造に起因する「G-band」が現れた。また,このとき,光学顕微鏡像においても,白金表面が黒化する様子が観察された。顕微鏡像の連続観察により,炭素析出は,はじめに析出した領域の周囲に,徐々に広がる形で進行することがわかった。ニッケル電極に対してメタンを供給した場合,共存する水蒸気量が少ない時には炭素が析出する様子がみられた。この場合にはグラファイト起因のピークのみがみられ,不定形炭素は観察されなかった。析出した炭素を電気化学的にポンピングした酸素で燃焼させることを試みたが,今回の実験ではこれを観察することができなかった。
|