研究概要 |
生体系は外部環境からの各種のストレスに晒された場合,分子から細胞レベルに至る,異なる階層間で,個々の構成要素同士が自己組織的かつ協同的に相互作用し,高度な秩序構造を形成する事により応答する機能(ストレス応答機能)を誘導する.生物・細胞の発現する多様なストレス応答機能を制御して利用する「ストレス応答型バイオプロセス」において,各構成要素(細胞・酵素・タンパク質・細胞膜・生体分子など)のストレス状態やストレッサを識別し,連続的モニタリングするための「ストレスセンサ」の開発が必要とされている.本研究では,リポソームやストレス応答型有機感応膜など生体模倣膜をセンサ素子として利用して,細胞膜の状態や細胞膜界面における各種の環境ストレッサ(変性タンパク質,匂い・香り分子など)をin situで連続的モニタリングできるという特徴を有するストレスセンサシステムを開発した.動的な細胞膜界面のストレス応答機能に着目し,一連の生体膜機能模倣型センサを開発し,ストレスにより誘起される匂い・香り分子など環境ストレッサを識別する手法を確立した.モデル生体膜(リポソーム)固定化クロマトグラフィー(ILC)を用いて,リポソーム-タンパク質間相互作用に加えて,リポソームリポソーム間相互作用を定量的に評価する手法を確立した.また,リポソーム固定化電極を開発し,ストレス応答機能に関わる種々の特異的な状態(モデル生体膜によるタンパク質の失活・再活性化・膜透過,あるいは膜融合など)の検出により,タンパク質の構造異常性を識別する方法を明らかにした.上記の知見に基づいて,ストレス応答型バイオプロセスをモニタリング・制御するための方法論を確立しストレス応答型バイオ生産分離プロセスへの応用例を示した.
|