研究概要 |
各種材料表面のナノレベル局所場での化学組成の解析は,金属・電極,有機薄膜,半導体,触媒,セラミックス材料などの物性や機能発現機構を解明し,さらに高度な新規機能材料を創製するためのブレークスルーをもたらすとの観点から本研究を推進してきた。 本年度は,近接場励起TOF表面質量分析法に関する基礎検討を重点課題として研究を遂行した。まず,ピコ秒パルスレーザをSTM/TOF質量分析装置の励起光源として用いて、多光子励起法による表面原子・分子の脱離・イオン化効率及び空間分解能などについて基礎検討を行った。試料として、金やパラジウムを蒸着したシリコンを用い、その表面をSTMで観察した後,分析目的位置にSTM探針を合わせて,ピコ秒パルスレーザ(波長266nm)を水平方向からSTM探針の先端部に照射するのと同期してTOF質量分析を行った結果,約2〜5nm径の極微小領域の質量分析が可能なことを明らかにした。STM探針に印加するパルス電圧及びレーザ強度と空間分解能の関係について検討した結果,励起レーザ光の広がり(約50μm径)に対して,TOF分析範囲は極めて微小領域(2nm)であることがわかった。これは、STM探針先端部に発生した近接場光が極微励起源として作用し、また多光子励起効果も相乗して、探針先端直下の表面原子の脱離・イオン化が増強されたことによるものと考えられる。特に本法では,質量分析の前後において,見事に一致したSTM像を観測することができ,分析部位を正確に知ることができるのも大きな特色である。さらに,本年度導入した波長可変型フェムト秒パルスレーザ励起光源を用いるTOF質量分析法について基礎検討を行った。しかし、この光源が長波長(750〜800nm)であるため,近接場顕微鏡用ナノピペット型光学探針への導入が難しく,現在,高調波発生器の開発と光チョッパーについて検討している。
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