研究概要 |
本課題で構築を試みたシステムは,複雑な多成分高分子系に対する(1)理論計算による相図の瞬時導出,(2)導出した相図上の任意の指定点に対応する空間構造解析のための分子シミュレーション,の2段階からなる.第一段階では,分子論的なパラメータとして,分子種,分子量,官能性(会合基の種類とその数,鎖上での配置),鎖の剛直性,非結合相互作用定数,会合相互作用(会合定数)をインプットパラメータとして準備する.会合基の性質(相互作用の飽和性)から相転移(ゾル・ゲル転移,マクロ相分離,ミクロ相分離,溶媒和,液晶相転移,ミセル形成など)の可能性を吟味し,サブシステムを選択する.まず,巨視的会合体が出現するかどうかの判定が必要で,サブシステムはゲル化する体系としない体系に大別されている.会合定数についてはアレニウス型温度依存性を仮定し,結合エネルギーとエントロピーを2つの可変パラメータとして導入する.次に「会合溶液理論」をもとに体系固有の化学ポテンシャルとオーダパラメータを統計力学的手法で計算し,相転移境界を決定する.バイノダル,スピノダル,ゾル・ゲル線,ミクロ相分離線,CMC,ネマチック,スメクチック転移線等を相平面(相空間)で描画する.得られた熱力学データ(浸透圧,クラスター分布,混合自由エネルギー,ゲル分率,オーダパラメータ等)を記録する.「会合溶液理論」については研究成果報告書(様式11)巻末に詳述してある. 第二段階では,相平面上で指定した温度,組成(初期状態)に対応するオフラティスでのモンテカルロシミュレーションを実行する.体系が平衡状態に達した時点で他の一点(終状態)をクリックすると,途中の非平衡状態の実空間像が時間経過とともに変化する様子が見られるような分子シミュレーションを行うのが最終目的である. 現在までにシステムに収録された具体的な体系は,以下のとおりである:<ゲル化しない体系>2量体形成,水和現象,側鎖会合,水素結合超分子液晶 <ゲル化する体系>単純ゲル,多重架橋ゲル,水和ゲル,2成分ゲル,コンホメーション変化によるゲル,水素結合液晶ネットワーク
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