研究概要 |
本研究では,HWD(Hot Water Drying,熱水乾燥)法による改質処理で脱水,疎水化し,これと物理的および化学的選炭とを組み合わせることで,ディーゼル発電燃料用のCWM(Coal Water Mixture)製造に適した低灰分炭(灰分5%以下)やウルトラクリーンコール(灰分1%以下)が得られることを見出した。また,HWD処理の際に生ずる溶液(改質液)中に有機還元物質が含まれていることに着目し,この改質液によるCr(VI)の還元について調べ,本液が汚染環境の浄化・修復の分野で利用できることを明らかにした。以下に、本研究の概要と主な成果について述べる。 1.HWD法により改質時の温度を270,300,330℃と変えて改質を行い,改質に伴う低品位炭の諸性質の変化を調べた。いずれの石炭も,改質により水分,カルボキシル基起因酸素量,水酸基起因酸素量が減少し,発熱量が増加した。また,改質温度が高くなるほど,これらの効果は顕著になり,それに伴い表面疎水性が増大した。 2.微粒の石炭に対する浮選では,改質炭のほうが原炭(未改質炭)より20〜30%高い可燃成分回収率を示し,精炭灰分も低くなった。これは,改質に伴い,石炭の表面疎水性が増すことによる。アルカリ熱水溶液法でBeluga炭の原炭および改質炭を処理した場合,改質炭のほうが,また改質炭でも改質温度が高いものほど可燃成分回収率は高く,精炭灰分は低くなった。改質炭についてはいずれの条件下でアルカリ熱水溶液処理しても精炭の灰分が5%以下となり,さらに改質炭を3回浮選して得た精炭について処理すると,灰分1%以下のウルトラクリーンコールが得られた。 3.Beluga炭を種々の温度でHWD処理する際に得られる溶液(改質液)について,GC/MS, HPLC, GPCなどを用いてキャラクタリゼーションを行った。270℃改質液には酢酸と分子量1600〜3400程度のオリゴマーが共存しており,オリゴマーを構成している物質は脂肪族有機酸エステルであった。300℃改質液にはメタノールやカテコール,フェノールなどが,330℃改質液にはメタノール,アセトン,酢酸,フェノール,カテコールが含まれていた。改質温度が高くなるほど,改質液のTOC濃度も急激に増大し,またカテコール濃度も300℃改質液で10ppm,330℃改質液で1300ppmと増大した。これらの改質液に含まれるカテコール類が還元能を有することは,サイクリックボルタンメトリーによって確認した。 4.いずれの改質液もCr(VI)還元能力を有しており,その還元能力は低pH領域でより強くなった。330℃および300℃改質液中にはその還元に有効に作用する物質としてカテコールが存在していることを示した。このような還元物質を含有している改質液は,今後,汚染環境の浄化・修復の分野での活用が期待できる。
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