研究概要 |
イネ葉緑体リボソームタンパク質遺伝子のトランジットペプチド領域を,Green Fluorescent Protein(GFP)遺伝子の上流に結合した融合遺伝子をアラビドプシスに形質転換し,葉緑体への効率的なタンパク質輸送についての基礎的知見を得た.その過程で,葉緑体からstromuleと呼ばれる多数の管状の構造が突起している事がわかった.さらに,このstromuleが細胞内のすべての葉緑体を結合するようなネットワーク様の構造を,高頻度で形成することをつきとめた.このstromuleにより葉緑体間の物質輸送や情報伝達がおこなわれている可能性が示唆された. 蛍光タンパク質Kaedeを用いて1細胞内の葉緑体を2色に染め分け,葉緑体の融合現象あるいはstromuleによるタンパク質の輸送がどの程度起きているのかを調べた.その結果,葉緑体の融合あるいはstromuleによるタンパク質の輸送は,Kaedeの蛍光で見る限り2日間でもあまり起こらない事がわかった.一方,ミトコンドリアに関しては,約2時間で細胞内のすべてのミトコンドリアが融合と分裂をおこなっている事がわかった.アラビドプシスの葉緑体ゲノムに残って機能している21個のリボソームタンパク質遺伝子のうち,rp12,rp116,rp120,rp136は葉緑体ゲノム上に存在するが,核ゲノムにも相同配列が存在することを明らかにした.これらの遺伝子は核ゲノムに転移している途中の段階である可能性がある.核ゲノム上のrp116の推定アミノ酸配列には,調べた範囲では適当な開始コドンを設定することができなかった.しかし,RT-PCRによってこの配列が転写されていることを確認した.
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