研究課題
基盤研究(B)
イネの培養細胞をモデル系として用い、病虫害抵抗性を制御する植物ホルモン、ジャスモン酸のシグナル伝達機構の研究を行った。ディファレンシャルスクリーニングによりジャスモン酸応答性遺伝子、RRJ1,RRJ2,OsOPR1,RERJ1を単離した。塩基配列の解析により、RRJ1,RRJ2はそれぞれアミノ酸代謝、エネルギー代謝に関与するものと考えられた。ジャスモン酸生合成酵素の一つある、12-oxophytodienoic acid reductaseをコードしていることを明らかにしたが、基質特異性の解析から他に本来の基質があってイネのストレス応答において重要な機能を果たしていることが推測された。RERJ1は、塩基性領域/ヘリックス/ループ/ヘリックスモチーフをもつ新規転写因子をコードしており、センス、アンチセンスmRNA過剰発現体を用いた解析から、イネの伸長制御に関与していることが示された。RERJ1が病虫害抵抗性関連遺伝子の発現を制御している可能性についても追究している。また、イネにおいてジャスモン酸を介したシグナル伝達系により誘導されるフィトアレキシンの生合成酵素として機能しているジテルペン炭化水素環化酵素遺伝子を世界で初めて単離し、それがイネの主要フィトアレキシンの一つであるファイトカサンの生合成酵素の一つであるent-cassa-12,15-diene合成酵素をコードしていることを明らかにした。ジャスモン酸結合タンパク質の追究に有用な、いくつかの系統のジャスモン酸誘導体の合成も行った。それら合成化合物の生理活性を検定することにより、伸長生長と二次代謝産物の生産誘導ではジャスモン酸受容体が異なる可能性を示した。現在、これらのプローブを用いてジャスモン酸受容体の追究を行っている。
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