配分額 *注記 |
14,200千円 (直接経費: 14,200千円)
2002年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2001年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2000年度: 7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
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研究概要 |
水産動物でも,個体死の後も細胞はしばらくの間生体活動を続けようとする.したがって,この間の取扱がその後の死後変化に大きな影響を及ぼす可能性がある.そこでまず,水産動物の個体死から細胞死に至る過程で生じる生物学的・化学的変化をモニターする手法を確立した.すなわち,本年度研究では,これらの手法を用いて生物学的・化学的変化をモニターすることにより,細胞死過程における動的変化の発現機構の解明とこれらの技術を応用した新たな鮮度判定法の確立を目指した.まず,生物学的アプローチとして急性摘出した魚類筋細胞ミトコンドリアおよび甲殻類筋細胞ミトコンドリアに膜電位感受性蛍光プローブJC-1あるいはrhodamine123を取り込ませてミトコンドリア膜電位の評価を行った.急性摘出したコイの筋細胞にJC-1を取り込ませた後,4時間まで窒素曝気したリンゲル液中においたところ,経時的に蛍光強度が減弱した.これは,低酸素状態に置かれたミトコンドリアの膜電位が低下し,ATP産生能も低下していることを示す.この細胞を十分に空気曝気したリンゲル液に戻すとミトコンドリアの蛍光が回復した.すなわち,コイ筋細胞は4時間もの間低酸素状態に置かれても少なくともミトコンドリアレベルでは生命維持活動が可能であることを示すものと思われる.また,イセエビ筋細胞にRohdamine123を投与し,ミトコンドリアに取り込ませた後,リンゲル液に十分通気しておけばミトコンドリア膜電位が少なくとも24時間以上維持される可能性が示された.このように,ミトコンドリアの膜電位およびその回復能をもって生命維持活性の評価ができるものと考えられた.さらに,12年度に確立した化学発光HPLCフローシステムを用いて,活魚の鮮度変化について検討した.ヒラメやマダイなどを即殺後,普通筋,血合筋,肝臓などの部位に分け,ホモジネート後、0℃で保存試験を行った.経時的にFolchの方法に準じて全脂質を抽出し,低温下で溶媒を留去後,過酸化物の定量分析を行った.HPLCフローシステムによる測定では,筋肉脂質よりも肝臓脂質の方が高い傾向が示されたが,リン脂質過酸化物の定量に再現性が乏しく,時間経過との相関はみられなかった.原因は全脂質中のリン脂質画分の低濃度にあると推定された.以上の結果から,細胞死をモニターするという新しい概念に基づいた鮮度判定手法として,ミトコンドリア膜電位測定および脂肪酸過酸化物の微量測定が適用できるものと結論された.
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