研究概要 |
日本の農林業は,後継者の不足,労働力の高齢化・婦女子化の進行,コスト低減の必要性,安全で高品質な作物の生産,農業活動による環境へのマイナスの影響などの多くの問題を抱えている。このような背景下で,トラクタ等の農業用車両に自律走行機能を導入した「ロボットトラクタ」の開発が注目されている。従来の研究は,車両が圃場内を走行して作業するための研究を集中的に扱ってきた。しかし,高齢化する地域社会構造の中で人を助け,補助するヘルパーとして働く新世代のロボットトラクタには,ハンドリング機能と知能制御が必要となる。その基礎技術開発を目的として研究を行い,以下の成果を得た。 1.提案済みの直交座標における軌跡制御にフィードバック制御を導入し,軌跡追従性能が向上することを確認した。また,軌跡設計を極座標に拡張し,90度以上の旋回での軌跡制御も可能であることを示した。 2.この軌跡制御を応用することで,自律走行車両が肥料補給を自動で実施できることを実証した。 3.トラクタに牽引されるトレーラの軌跡制御に拡張した。この制御手法の性能は,シミュレーションで確認した。また,実機による試験を行っている。 4.簡易な構造をもつレーザーセンサを用いた10m以下の近距離での対象物位置,姿勢計測法を開発した。 5.2台の農業用車両の協調作業を実現するため,自律車両が先行する車両に追随して走行するためのシステムを開発し,実機によってその動作を確認した。 6.人間が操縦する場合にも,精密な重量物ハンドリング作業を実現することを目的として,フロントローダの運動自由度を3としたハンドリング装置を試作し,コンピュータ制御によればハンドリング機能が向上することを確認した。 7.車両の走行制御研究のために3次元グラフィックス表示可能なオブジェクト指向シミュレーターを開発した。
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