研究概要 |
最もポピュラーな免疫不全症である無ガンマグロブリン血症(XLA)の責任遺伝子BtkのB細胞における機能解析をさらに進めた.これまでに我々はB細胞におけるBtkの主要な役割はホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)を活性化することによってB細胞抗原レセプター(BCR)刺激後に細胞内カルシウムの動員を生じさせることであることを明らかにしてきた.さらに,Btkがアダプター分子BLNKを介して,もうひとつのチロシンキナーゼSykと協調してPLCγ2を活性化することを示してきた.しかしながら実際にPLCγ2がBtkあるいはSykによってどのような分子メカニズムで活性化されるのかは明らかではなかった.今回我々はBtkによるPLCγ2のリン酸化部位を決定し,その各々のチロシン残基のリン酸化がB細胞内におけるPLCγ2の活性化におよぼす効果を検討した.そしてBtkはPLCγ2の4つのチロシン残基をリン酸化し,PLCγ2の活性化はそれらのリン酸化が協調的にはたらいて生じることを明らかにした.さらに,本邦のXLA患者総計百数十名のBtkの変異の同定およびその蛋白質の解析を行い,一方ではB細胞の著減と低ガンマグロブリン血症を呈する男子症例の80%以上がBtkの変異を有することを明らかにした.
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