研究課題/領域番号 |
12470038
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
病態医化学
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
赤池 孝章 熊本大学, 医学部, 助教授 (20231798)
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研究分担者 |
前田 浩 熊本大学, 医学部, 教授 (90004613)
宮本 洋一 熊本大学, 医学部, 助手 (20295132)
澤 智裕 熊本大学, 医学部, 助手 (30284756)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
2002年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2001年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2000年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | 酸化ストレス / 遺伝子変異 / 変異原性 / ウイルス変異 / 分子進化 / NO / 8-ニトログアノシン / 抗8-ニトログアノシン抗体 / 8-nitroguanine / 抗8-nitroguanine抗体 / 酸素ラジカル / 分化進化 / 塩基損傷 |
研究概要 |
NO、酸化ストレスによる微生物の遺伝子変異促進作用に焦点をあて病原微生物の分子進化のメカニズムを解析した。さらに、マウスのウイルス肺炎モデルを用いて、宿主応答に伴って誘導される誘導型NO合成酵素(iNOS)遺伝子の発現と、肺内の過剰なNO産生によりもたらされる生体分子のニトロ化反応について解析し、以下の様な結果を得た。 (1)ウイルス遺伝子の変異を定量的に解析するシステムを開発し、これを用いて、感染病巣において過剰に産生されるNOが、病原ウイルスに対して強い変異原性を発揮することを見出した。 (2)NO由来の活性酸化窒素種であるパーオキシナイトライトが、ウイルスのみならず、サルモネラやピロリ菌の遺伝子変異を誘発し、抗菌剤に対する薬剤耐性頻度を高めることが分かった。 (3)インフルエンザウイルスおよびセンダイウイルスのマウス致死的肺炎モデルにおいて、肺炎増悪時期と一致して肺内に過剰のNO産生が確認され、iNOS欠損マウスでは検出感度以下であった。 (4)感染マウスの生存率および肺の病理組織学的変化は、iNOS欠損マウス群において、野生型マウスと比べ有意に改善した。さらに、iNOS発現に依存性して、NOに由来した活性酸化窒素種生成のバイオマーカーである3-ニトロチロシンが産生されていた。尚、NOは生体内においてな抗ウイルス活性を発揮していないなかった。 (5)活性酸化窒素種による生体内での核酸ニトロ化反応を解析するため、抗8-ニトログアノシン特異抗体を作製し、インフルエンザウイルスおよびセンダイウイルス感染モデルにおける8-ニトログアノシン生成を解析した。その結果、免疫組織化学的解析によりウイルス感染マウスの気管支、細気管支上皮に強い免疫染色が認められ、生体内において8-ニトログアノシンが生成することが証明された。 (6)8-ニトログアノシンのユニークな生化学的特性として、NADPH-P450レダクターゼ系からのスーパーオキサイド産生を8-ニトログアノシンが著しく増強させることを明らかにした。また、iNOSがNADPHと8-ニトログアノシンの存在下においてスーパーオキサイドを産生することを見出した。 以上の知見より、NO由来の活性酸化窒素種が生体分子のニトロ化反応を介して、遺伝子変異や細胞機能障害を誘発し、ウイルス感染病態において重要な役割を演じていることが示唆された。これは、8-ニトログアノシンの生体内生成を世界で初めて証明したものであり、NOやパーオキシナイトライトが、新しい損傷塩基である8-ニトログアノシンの生成を介して変異原性を発揮していることを示唆する大変重要な知見である。今後さらに、8-ニトログアノシンの生体内生成に焦点をあてながら、その修復システムの探索を含め、酸化ストレスによる病原微生物の遺伝子変異メカニズムの解析を進める予定である。
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