研究分担者 |
吉永 淳 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (70222396)
榎本 秀一 理化学研究所, 加速器基盤研究部, 先任研究員 (10271553)
佐藤 洋 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40125571)
中澤 港 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40251227)
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配分額 *注記 |
13,400千円 (直接経費: 13,400千円)
2002年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2001年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
2000年度: 5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
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研究概要 |
砒素による地下水の汚染はアジアを含む世界各地に存在し,中毒危険人口は数千万人という大規模なものである.砒素の慢性曝露による影響については,これまで皮膚症状やがんなどを中心として,主に成人での影響が調べられてきている.発達期は多くの化学物質に対して高感受性を示すが,砒素が発達に及ぼす影響については検討が極めて少ない.そこで,本研究では母体の砒素曝露が胎仔・出生仔に及ぼす影響について,マウスを用いて2つのアプローチより検討した.1)砒素とセレンの母体-胎仔系における相互作用.両者を過剰量で投与すると,相互に毒性を減弱することが知られているが,現実においてより重要なセレン欠乏と砒素毒性との関連については知見がわずかである.C57BL妊娠マウスに砒素(亜ヒ酸)を妊娠7-16日目の間,経口投与し,妊娠17日目に解剖して組織のセレン濃度,セレン酵素活性を調べた.また,セレン欠乏状態とした場合にこれらの影響がどのように修飾されるかを検討した.その結果,砒素投与により肝のセレンが減少すること,セレン欠乏条件下では充足条件下に比較して母仔ともに肝・脳への砒素の蓄積が顕著に増加することを認めた.また,胎仔組織において,セレン充足条件下では砒素によって活性が増加したチオレドキシンレダクターゼ(セレン酵素の一つ)が,セレン欠乏条件では逆に低下した.このようなセレン栄養条件による影響の違いは母体には認められず,胎仔が栄養条件による修飾を受けやすいことが示された.2)母体砒素曝露が出生仔の行動機能に及ぼす影響:妊娠マウスを10あるいは100ppmの砒素を添加した水で飼育し,出生仔の運動機能の発達を評価したところ,一部の機能に発達の遅れを認めた.離乳期の影響は軽微であったが,生後8週齢においてもオープンフィールド行動の異常を認めた.以上より,在胎期における砒素曝露が行動機能に影響を及ぼすことが示された.
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