配分額 *注記 |
14,200千円 (直接経費: 14,200千円)
2002年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2001年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2000年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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研究概要 |
日本人の死因の第1位を占める悪性新生物のうちで,肺がんを中心とした呼吸器系のがんによる死亡が増加の一途をたどっており,特に男性では部位別死亡のトップになっている.この主たる原因は,タバコ煙やデイーゼルエンジンの排気微粒子に含まれる発がん物質,とりわけ多環芳香族炭化水素(PAH)への長期にわたる過剰暴露ではないかと言われているが,その定量的リスク評価は必ずしも十分でない.そこで本研究期間の前半では,PAHの過剰暴露集団として高度喫煙者およびコークス炉作業者集団を対象とし,これらの集団からインフォームドコンセントを得た上で少量の末梢血およびスポット尿を採取し,これらをサンプルとして体内の遺伝子損傷の解析を試みた.そのBiomarkerとして,PAHの代謝中間体とDNA塩基との共有結合により生じるDNA付加体(adducts)に注目し,リンパ球のDNA付加体量を32Pポストラベリング法を用いて測定し,体内暴露総量との関係を見たところ,有意な正の相関が認められた.しかし,このDNA付加体レベルには同程度の暴露でも相当の個人差が見られた.そこで個人差の遺伝要因として薬物代謝酵素の内で,特にCYP1A1やGSTの遺伝子多型に注目し解析を行ったところ,なかでもCYP1A1変異型の人でDNA付加体レベルがやや高い傾向が認められた.本研究期間の後半では,上記暴露集団を対象として,リンパ球DNA付加体と酸化的DNA損傷の指標である8-オキソデオキシグアノシン(8-oxodG)を並行測定し,それらのレベルと体内暴露総量との関係を解析した.その結果,暴露量とDNA付加体量との間には有意な相関が得られたが,8-oxodGとの間には有意な相関が得られなかった.この成績から,DNA付加体測定はPAH暴露による遺伝子損傷を解析する上で有用であることが示唆された.
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