研究概要 |
肥満細胞によって産生,放出される種々のサイトカインおよびヒスタミンやアラキドン酸代謝産物など化学伝達物はアレルギー性気道炎症の成立や維持に重要な役割を果たす.さらに最近では,これらの化学伝達物質は気道収縮や血管透過性亢進作用以外に幅広く喘息性気道病変に関与することが報告されている.特にleukotrien(LT)C4は、気道リモデリングや,Prostaglandin(PG)D2と共にTh2型気道炎症の増強に関与すること示唆されており,喘息における新たな役割が注目されている. そこで本研究では,LTC4とPGD2に注目し,喘息性気道炎症における役割について解析した.これらの実験目的のためにLTC4合成酵素遺伝子トランスジェニックマウスも作成した。以下の点について明らかにすることができた. 1)LTC4はT細胞によるTh2サイトカインの産生を促進する.また,LTC4はIL-13によって発現が誘導されたLT受容体を介して線維芽細胞のeotaxinの産生を誘導する. 2)PGD2は気道上皮細胞からのケモカインであるMDCの産生を介してTh2細胞の気道局所への遊走を促進する. 3)転写抑制因子であるBCL6はIL-5遺伝子およびLTC4合成酵素遺伝子の発現に対して負の制御をする. 以上よりはLTC4やPGD2がそれぞれ異なったメカニズムでTh2型気道炎症の増悪因子となること,また,BCL6は遺伝子レベルで喘息性気道炎症に対して抑制的に調節しており,その標的の1つがLTC4であることを示した.
|