研究概要 |
表皮水泡症-筋ジストロフィー症候群(epidermolysis bullosa-muscular dystrophy syndrome : EB-MD症候群)は,プレクチンの欠損により発症する先天性遺伝性疾患である。 本研究では、EB-MD症候群の自験4家系、ならびに諸外国より情報提供のあった6家系を検索の主な対象とした.患者並びに家族から抽出したgenomic DNAを鋳型としてPCRにてプレクチン遺伝子のすべてのexonならびにexon-intron境界部分を増幅した。Heteroduplex法により,遺伝子変異を含んでいるexonを推定し,その部分のgenomic DNA塩基配列をシーケンサーにて解析し、遺伝子変異を確認した。またプレクチン遺伝子のうち巨大なexon32,33領域に遺伝子変位が存在した場合,上記の通常のPCR, heteroduplex, direct sequencingでは変異を確実に同定することは困難であったため、protein truncation testを用いて、プレクチン遺伝子変異を同定した。また生検組織について,免疫組織化学,蛍光抗体法,透過電顕に加えて,凍結固定・凍結置換法を用いた超低温免疫電顕法を用いて検討した。特に,表皮細胞ではヘミデスモゾームだけではなく,デスモゾームでの分布にも着目して観察を行った。 その結果、プレクチンの両alleleに早期停止コドンを有するプレクチン完全欠損患者の皮膚では、ヘミデスモゾームの接着板の低形成、ヘミデスモゾームの数の減少が確認された。しかし、その他のヘミデスモゾームを構成する他の蛋白(BPAG1,BPAG2,α6β4インテグリン),さらにラミニン5,VII型コラーゲン等の発現状態には明らかな異常は見い出されなかった。また、ホモのin-frame deletion変異により,不完全なプレクチンが産生されていることが確認された家系では、ヘミデスモゾームの異常の程度が軽く、筋ジストロフィーも含めた臨床重症度の程度も軽かった。このような変化は培養細胞レベルでも確認され、本症の遺伝型・表現型の相関関係のみならず、本症の病態生理も明らかになった。
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